開発ストーリー

だって猫って
瓦が好きでしょ
三州瓦の伝統技術で作った猫の家
「瓦猫」が誕生

大正2年創業の100年企業として、江戸時代から続く三州瓦を製造する三州野安株式会社。その伝統技術を生かし、鬼瓦職人が一つひとつ丁寧に作り上げる本物志向の猫の家。愛猫家をリーダーに結成された瓦猫プロジェクトから生まれた、猫に好かれるキャットハウス「瓦猫」の誕生ストーリーに迫る。

――三州は、江戸時代から瓦の三大産地(三州、石州、淡路)の一つとして知られています。まずは、その「三州瓦」について教えてください。

 江戸時代以降の瓦の源流は、安土桃山時代の城にあると言われています。その後、各地の城下町で都市化が進み、一般の住居にも瓦が使われるようになったのは1700年代で、江戸時代中頃のこと。その頃に瓦産地としての三州の歴史が始まりました。
 江戸や各地都市の発展とともに栄えた瓦産業の中でも三州(三河)は、船便による輸送ができたことで一気に発展しました。また三州で瓦に適した良質な粘土「三河土」が大量に掘れたことも、三州瓦が高品質と評価される理由のひとつです。
 日本の瓦は40種ほどあり、全国には約50の瓦産地がありますが、三州瓦は屋根材として経済産業省特許庁から「地域ブランド」に認められました。そして全国出荷枚数の約70%は三州瓦が占めています。

――日本六古窯である常滑から瀬戸や美濃・多治見まで、地形的にも良質な粘土層であることが分かります。そんな焼き物が盛んな一大産地で、三州野安株式会社は瓦の専業メーカーとして100年の歴史があります。現在は多様な屋根材がある中で、粘土瓦の良さとは何でしょう。

 本来、瓦は特別なメンテナンスをしなくても50年以上にわたり家を守ってくれる頼りになる存在です。
 残念ながら、大規模な地震で倒壊した家屋の映像から負のイメージを持つ方がいるかもしれませんが、近年の基準に沿って正しく施工された瓦の安全性はデータでも検証されています。粘土瓦は他の屋根材に比べて色落ちなどの劣化が極めて少なく、ほとんど塗り替えが不要です。ヒビや割れなどの不具合が生じた場合にも、数枚単位の取り替えで済むことが多く、大掛かりな修繕の心配もいりません。それだけでなく、物を傷める大きな原因となる「結露」を防止するため、通気性が高く、住宅が長持ちする理想の屋根材でもあります。何より、他の屋根材と比べて粘土瓦は断熱性と保温性に優れており、夏は外からの熱を遮断して涼しくて、冬は保温効果で暖かいのが特徴です。

なかなか手に触れる機会のない
瓦の
手触り、美しさ、そして素材の良さを
一般の方にも知ってもらいたい

――確かに、「夏はひんやり、冬はぽかぽか」というイメージがあります。そうした瓦の特徴を生かした新しいプロジェクトが立ち上がりました。きっかけは何だったのでしょうか。

 あるハウスメーカーさんとの打ち合わせで、「ペット共生住宅が注目されている今、住宅と同じクオリティーを持つ愛犬用の小屋ができないものか」と相談を受けたのが始まりです。後に住宅と同じ、本物の瓦が乗った犬小屋ができたら面白いという話から、「瓦といえば、猫って屋根瓦の上で気持ちよく寝ているよね」と、そんな話も出てきて、犬猫用のペットハウスプロジェクトが2019年にスタートしました。
 最初は伝統企業のモノづくりを支援する県のバックアップと、若いアイデアを持つ大同大学からの協力を得ることになりました。

――屋根材が多様化していく中、瓦に新たな可能性を求める試みとなったわけですね。

 屋根材が多様化し、近年は粘土瓦の出荷が減少していました。このプロジェクトは、瓦製品の新しいカタチを模索する良い機会となりました。普段の暮らしの中で、なかなか手に触れる機会のない瓦の手触り、美しさ、そして瓦の素材の良さを一般の方にも知ってもらいたいという想いがあります。それには皆さんに触れてもらえる商品が一番です。屋根になってしまえば触ることはほとんどありませんが、家の中に置くキャットハウスなら瓦の魅力を日々感じてもらえるだろうと思いました。

――そして、瓦で猫の家を作る瓦猫プロジェクトが始動しました。

 瓦猫プロジェクトは、猫好きの社員を中心にチームが結成されました。猫好きが猫のために作る家です。猫は狭い場所を好むとか、なぜかピンクが好きな猫が多いとか、猫の気持ちになって考えました。瓦材が持っている「夏は涼しく、冬は暖かい」という特性は猫にとっても過ごしやすく、国民的アニメでも屋根瓦の上で日向ぼっこする猫にほっこりするシーンがあります。そこから「やっぱり猫って瓦が好きだよね」ということになり、「だって猫って瓦が好きでしょ」というプロジェクトの合言葉が生まれました。
 瓦には保温性があるので冬は中の温度が暖かくなります。それはちょうどデザインとも一致した雪洞のかまくらと同じです。猫が瓦の上に乗ることができるよう上部を平らにし、丸まって寝られるのが大きな特徴です。

「瓦猫」は、鬼師の熟練した
技を生かした
瓦ならではの工芸品

――猫の気持ちになって、かまくら型の猫のおうちが完成したのですね。このデザインをカタチにするには、やはり高度な技術が必要だったのでしょうか。

 高浜市は鬼瓦でも有名な町で、鬼師と呼ばれる職人がいます。彼らは、複雑で立体的な瓦を手作業で見事に造り上げる、瓦造りのプロ。「瓦猫」は、鬼師の熟練した技を生かした瓦ならではの工芸品と言えます。
 まず、荒地を面取りして金型で成形した後、専用のナイフで断面を揃えて窓を切り抜くのですが、これが簡単なようで難しい。これだけの大きさのものを手作業で正確に作るには、鬼師による高度な技術が必要です。隅々まで均一に粘土を伸ばすにも、押し出す圧力は経験と勘が頼りです。強引にやればヒビが入ったり、切れてしまうからです。その後、約10日間をかけて変形しないようゆっくりと乾かした後、1150度の高温で一昼夜ほど窯焼きします。

――瓦と材料が同じだけでなく、瓦造りのプロ「鬼師」が手作りするこだわりように、創業100年を超える老舗企業の、本物志向の本気のモノづくりを感じます。

 「瓦猫」には、粘土の質感や表情を生かして釉薬をあえてかけない「素焼き」のほかに、雪のかまくらをイメージした白色の釉薬で仕上げる「しろ」、日本の桜をイメージした桜色の釉薬で仕上げる「さくら」の3色があります。釉薬には瓦専用の発色が良いものを使い、これに改良を加えながら「瓦猫」の形状に合わせて発色などの調整が繰り返されました。
 そうした鬼師による丁寧な手仕事と、天然素材で高品質、丈夫で衛生的という瓦材ならではの特性に、インテリア性の高いデザインが合わさったことで、日本最大のペット関連の展示会では予想をはるかに上回る高い好評を得ることができました。

瓦業界を飛び越え、いろんな分野で
瓦の技術を活かしていく挑戦を
絶えず続けながら、
同時に
本来の瓦の良さを伝えていきたい

――この「瓦猫」から派生して、瓦に猫マークのあるものや、肉球を象った瓦なども商品開発されましたね。ペット業界では異色の伝統産業から生まれたプロダクトとして注目されています。さらにアーティストとのコラボによる新たな進化を見せています。

 おかげさまで「瓦猫」が様々なメディアに取り上げられる中、ある方のご紹介で一流クリエイターである倉科昌高さんとのご縁ができました。
 倉科さんは有名ミュージシャンのギターをはじめ、MTBレーサーのヘルメットからインテリア・建築まで、ありとあらゆる立体物をオーダーメイドでカスタムペイントするアーティストです。そのような方が、「瓦猫」をペイントしてくれると聞いて、本当に嬉しかったです。一点もののアートと我々の伝統技術が融合することで生まれる、日本の優れたモノづくりを世界にも発信していきたいという気持ちがいっそう高まりました。
 今後もこの「Kawara Collaboration」では、様々な分野で活躍するアーティストの方たちと、これまでにない瓦の意匠デザインを企画して、新しい瓦の価値を創造していきたいと思っています。そして瓦業界を飛び越え、いろんな分野で瓦の技術を活かしていく挑戦を絶えず続けながら、同時に本来の瓦の良さを伝えていきたいです。

商品情報

瓦猫 - 素焼き

瓦猫 – 素焼き

素地の風合いを生かして無釉で仕上げています。

素材:瓦粘土 重さ:15kg
サイズ:W(直径)600mm×H250mm

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瓦猫 - しろ

瓦猫 – しろ

雪のかまくらをイメージした
白色の釉薬で仕上げました。

素材:瓦粘土 重さ:15kg
サイズ:W(直径)600mm×H250mm

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瓦猫 - さくら

瓦猫 – さくら

日本の桜をイメージした
桜色の釉薬で仕上げました。

素材/瓦粘土 重さ/15kg
サイズ/W(直径)600mm×H250mm

オンラインショップ(BASE)へ

※“瓦猫”は三州瓦と同じ天然素材である自然の粘土を原料として職人の手によって作られた焼物です。焼物特有の色ムラや凹凸などの現象が見られますが焼物特有の特徴になります。

100年企業
三州野安が生み出した
瓦猫

“だって猫って瓦が好きでしょ” を製造理念に、創業大正2年100年企業の老舗三州瓦メーカーの三州野安株式会社が江戸時代から続く三州瓦の伝統の技で生み出した猫の家 “瓦猫”。瓦の上で気持ちよさそうに寝ている猫からヒントを得て生まれました。
“瓦猫” 伝統の技術に革新の発想をあわせて世界の猫に気持ち良い空間を提供します。

江戸時代から続く三州瓦の伝統

日本最大の瓦の産地三州三河地方高浜市。矢作川の三角州に位置するこの場所で江戸の昔から伝統の技を継承し続けています。

100年企業、三州野安株式会社

瓦一筋100年。日本全国の城、社寺仏閣や住宅などで使われる三州瓦の製造会社として一世紀日本の建物を守っています。

三河の良質な土・素材にこだわる

愛猫に長く使ってほしいから丈夫な三州瓦と同じ三河の良質な粘土を使って職人が思いを込めて作ります。

鬼瓦職人の手仕事から生まれます

“瓦猫”は一つ一つ鬼瓦の細工を施す職人の手で生まれています。繊細な手仕事のオンリー1の逸品です。

メイドインジャパンへのこだわり

原料の粘土から、鬼瓦職人の手仕事、そして1200度の高温焼成で焼き上げるまで全ての工程を高浜で作っています。

水で洗える陶器だから衛生的

三州瓦の素材だから、布や紙などの素材でなく、陶器だからこその衛生的な空間を保つことが可能です。

夏は涼しく、冬は暖かい

“瓦猫”の基になる、三州瓦の特徴は、断熱性、耐熱性、耐寒性に強く、四季の厳しい日本の家を守っています。

猫が好きなデザインを考えました

暗くて静かな空間が大好きな猫。鬼瓦職人が一つ一つ手作業で切り出す窓の開口部から差し込む光に癒されます。

爪を研いでも傷がつかない

爪を研ぐ猫の習性にも配慮して、陶器で丈夫な“瓦猫”は爪痕がつかなく、強度の強さが特徴です。

土で出来ているから再利用が可能です

粘土をこねて焼き上げて生み出した“瓦猫”は土で出来ているからこそ、土にかえる環境に配慮した商品です。